ロンドンデジタルデザイン最前線 / TOMATO

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トマトが出来たのは7〜8年前。上の階にはトレーシー・カーター

とスティーブ・ベイカー。トレーシーはスティーブのアシスタント

で、トマトのプロジェクトや他のプロジェクトを手伝うの。音楽の

プロジェクトも多いわ。色んな歌手のマネージメントをしてるか

ら。

大きなミーティングテーブルとレコーディングスタジオもあるわ。

これがスティーブのデスクとてもきちんとしてる。

スティーブ・ベイカー

トマトは1991年の初めに出来た。ジョン・ワーウィッカーは初めレ

コード会社のアートディレクターだったがビビッド・フィルムに移

ったんだ。だがそこが倒産した。

ジョンはコリンと僕と仕事をしたことがあった。コリンはブラック

という名でレコードを出していて、僕がマネージしてたんだが、ジ

ョンはそのビデオとかアルバムデザインとか、宣伝を全部担当して

いた。

僕たちはジョンに、新しい会社を始めようと言った。ジョンは、今

までと違うやり方でならやってもいいと言うんだ。ここ何年かで知

り合った人間を仲間に加えたい、とね。

基本的にはそれがトマトのメンバーになった。今トマトで仕事して

るうちで2人だけは別だけど。最初に集まったメンバーは今でもみ

んないるよ。

コリンがスタジオを使うことが多いけど今はトマトも使ってるわ。

コリン

僕のマネージャーだったスティーブと話をしていたら、ジョンが前

の会社を辞めて、新しく「似たもの同士のゆるやかな集合体」

を作ると言うんだ。何をするつもりなのかを聞いて、面白いそうだ

と思った。当時僕はちょっとした金を持っていたんで投資したん

だ。必要なコンピューターやなんかを買ったり、小さな事務所を借

りたり。ここからほんの2分のところさ。

これがジョンのデスクジョンは今オーストラリアにいるの。

ジョンです。ここ1年くらいオーストラリアのメルボルンと行った

り来たりで仕事をしてる。

後ろにあるのが仕事の一つで、フェデレーションスクエア(連邦政

府広場)の囲いだよ。一大プロジェクトだ。

オーストラリア美術館やエス・ビー・エスの文化チャンネルもここ

に出来る。この囲い自体がプロジェクトの視覚表現の第一号なん

だ。今案内して見せてあげるけど、長さは約185メートル。角を曲が

ってずっと続いてるんだ。そこも見せてあげるよ。じゃ、行こう

か。

ジョン・ワーウィッカーに会ったのは、彼が僕の大学に講演に来た

から。僕は3年生だった。

ジョンは自分の作品を見せた。1990年のことだけど、ミュージック

ビデオとかレコードジャケットとかね。

面白い話しをしたよ。概念的なこともそうでないことも。つまり...

説明するのは難しいけど、彼が言ったのは、概念とかモノに囚われ

る必要はないってこと。何かを作るときにね。そういうものは重要

じゃない。

モノを後生大事にする必要はないんだって。それは僕もすごく感じ

てたことだったんだ。

でも見せられた作品はひどくてさ、屑みたいだった。だからそう言

ってやったんだ。そのあとジョンと話をする機会があって、ジョン

が夏休みに仕事をくれた。

サイモンはそこでフリーランスで仕事をしてたし、ダークはレコー

ドジャケットの仕事に関わってた。リックとカールはジョンの10年

来の古い友だちで、そういう具合にみんな知り合ったんだよ。半年

か1年くらいの間にね。

そうやって始まったのさ。

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今日はGrahamは編集室よ。2-3日前に会ったでしょ?

Graham

自分が何が嫌いか、がはっきりしてた。それも変わったね。つまり

それは大事じゃなくなってきてる。

それは大事なこととはもう思わないんだ。僕にとっては・・・仕事

の上でも、生きていく上でもだな。

前は何がヒドくて何がスバラシいのか、ものすごくはっきりしてた

けど。特にダークやジョンと話してると、ふたりとも僕より10才く

らい上なわけだけど、ふたりとこの話しをすると、ふたりは意見が

全然違うんだ。

僕よりずっと極端なんだよ、ふたりとも。ダークはいいと思うもの

がすごくはっきりしてるし、ジョンはそれには興味がない。

僕はそのまんなかへんにいるんだな。

音声さん、聞こえてる?

耳から鼻孔を通す?

テープは要らないな。

他にも300通りくらいやりかたはあるけど。

トマトに入る前は教えてた。何年も教職にいたよ。ロイヤル・カレ

ッジ・オブ・アートでイラストレーションを勉強して、長いことイ

ラストレーターになろうとしてたんだ

でもうまくいかなかった。ものすごく難しかった。ずいぶん長いこ

とそうやっていて、欲しかったものが手にはいるようになった

仕事が来るようになって、評判も良くなった頃、もうそういうもの

は要らないと思ったんだ。

それで仕事を止めて、古い友人に連絡をとった、それがジョン・ワ

ーウィッカーだよ。

下に線路が見えるね、そこに屋根ができるんだ。鉄道の上全部に

ね。

鉄道はそのまま走るけどその上に屋根ができて、その上にビルが建

つのさ。

これが大ざっぱな完成予想図だ。僕たちがいるのはここ。ここが囲

いがあったところ。

僕がショーンと一緒にやってるのは、この区画の看板やロゴやコミ

ュニケーションの一切。目玉のひとつがアトリアム(中庭)なん

だ。

これだよ。このアトリアムは長さが105メートルある。ガラスの壁側

にはスペクトルをデザインしたんだ。多文化社会の視覚的な隠喩だ

ね。このスペクトルはガラスの上に特別の偏光ガラスで描かれてい

て、その上に光とビデオで映像が投射される。だから一日24時間変

化する。

夜はアトリアム全体が色鮮やかに輝くんだ。地球上で最も素晴しい

ガラスの建物というわけさ。というわけで、これがこのプロジェク

トの概要だよ。

サイモン・テイラーのデスク

目的としていたのは、僕たちそれぞれのアイデア、いわばジャーニ

ーを追及できる場所、環境をつくること。

商業的な仕事環境とは別にね。

商業的な仕事のしかたを始めると、その他のことが見えなくなって

しまうからね。家で考えたり人に話したりはするかもしれないけ

ど。そのアイデアをもっと生かしたかったら、かなり本気でやらな

いとだめなんだ

重要なのは、自分のやりたいことをする自由と、柔軟性を持つこと

なんだ。

トマトの構造は、クリエイターが、自分のパーソナルな作品を作る

ために、時間を使えるようにできているんだ。

誰に注文されるのでもなく、作りたいという以外に何の理由もなく

ね。

ミュージシャンがそうだろう。ミュージシャンがレコーディングし

たり曲を書いたりするのはそうしたいからであって、金で雇われた

からではないよね。

仕事のやり方は変化してると思う。それはつまり、僕たちが何をす

るかについての考え方を広げて、どうやって一緒に仕事をし、一緒

に生きて行くか。

それを人に伝える方法に変えていくことだ。政治的なものでも社会

的なものでも宗教的なものでもなく、もっと別な何か...。

具体的にはクリエイティビティだと思うんだけど。それをどうやっ

て仕事に、生活に使えるかだ。

何かを期待してたわけじゃない。人と一緒にいて話ができるのがよ

かった。

興味深い会話や意見の交換ができるのがね。

音楽のアイデアや本や映画やいろんなことについてね。何を期待し

てたわけでもないんだ。つまりほとんど、一緒にいるだけである意

味十分で、そこから生まれるものというのは...

(マイク落ちる)

僕の鼓動が激しすぎるのかな(笑)

何だったっけ?何も期待はしてなかったよ

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ここがレコーディングスタジオ。マーティンがここで作業するの

ここでサイモンとマイケルにインタビューしてたでしょ?

そこはサウンドスタジオ。

1ヵ月後にシングルが出るんだ。次のシングルの曲を作ってるとこ

ろだよ。

別の曲を作るアイデアがあるんだよ。僕たち3人で作ってるんだ。

ユニット名はジョニー・コンコースっていうんだけどさ。

アイデアのコンセプトはサウンドトラック。いつも同じ音楽のジャ

ンルにいるのではなくて、すごく視覚的な音楽を作りたいんだ。

そう、空想上の映画のサウンドトラックと言ってもいい。僕らがや

ろうとしてるのは、あるシーンや筋書が想像出来るような音楽を作

ること。

自分自身のサウンドトラックとして使えるようなね。

すごく面白いプロジェクトだよ。音をいじってるうちに、ある雰囲

気や動きを喚起させるものになるんだ。出来上がるまで、どういう

ものができるかわからない。

マイケル・ホーシャムです。机に座ったら?

トマトとは何であるか理解した、と言うのは見当はずれだよ。僕は

他の誰の頭の中も見えないしね。

自分たちだってよくわからないのに。

そう、そうなんだ。だからそういう反応をされると可笑しいよ。君

たちのしようとしてることはよーくわかるよ、なんて言われるとね。

僕たちだってわかってるわけじゃないんだから。

トマトがスタートしたときは、すごく本が作りたかったんだ。

僕にとってそれはすごく大事なことだった。テクノロジーが進歩す

るのは明らかだったし、コンピューターとか CD ROM とかが発達す

るのもわかってたけど、本を作り続けるのが大事だと思ったんだ

よ。

手に持てるのが気持ちいいっていうほかには理由はないんだけど

ね。

それだけだよ シンプルなことさ。僕はただページをめくるのが好

きなんだ。

個人的には時間の要素があるメディアにすごく興味がある。

映画や音楽だよ。でもファッションの仕事もしてるけどね、それも

また、状況によって変化を生むんだ。

どう着るか、何と合わせるかとかでね。完全に固定されないものが

好きなんだよ。これは絶対こうだ、って。

つまり、物をつくることに興味があるんだけど、できればそこに時

間の要素がはいるのが好きなんだ。

これはJuanita。トマトの中心だよ。

一番上の引き出しを開けてくれるかな? 右の方にアスペジの本があ

るだろう.一冊持ってきて。

これのいいところは、アスペジが僕のすることについてリラックス

してるってこと。気に入ってくれてるんだ。

彼は服を箱一杯送ってきて、僕はファックスでアイデアを、たいて

いはスケッチで送る。それから僕が服を選んで、写真を撮って、彼

に送るんだ。

多分これが僕のベストの仕事だと思う。コピーも写真も文字のデザ

インも僕。何冊かは息子も手伝ったけどね。

うん、脚本のひとつはカールとの共作で、ふたりの労働者階級の伊

達男のはなし。

お金があったら僕がやりたいのは、ドキュメンタリーを2本撮るこ

と。1本はアイルランドの霊廟信仰について。宗教なんだけど。

うすぎたないけど伊達男なんだ。ふたりはドライブに行く。洗濯し

てたコインランドリーからね。

アイルランドではある特定の聖徒をまつるための、すごい岩屋を作

るんだよ。

ひとりはずっと話してて、話しの中でいろんなことが起きる

そして...。

南アイルランドのそこらじゅうにあって地元のコミュニティが維持

してるんだ。

結局コインランドリーに戻りして、全部やり直さなきゃならない羽

目になる。

アイルランド人にとってはすごく大きな意味を持つもので、春は特

にそう。

男の話しもシナリオ自体も...

信じられないような場所にあって、ものすごく美しいんだけど

ダサイくてキッチュ、というのとも紙一重なんだ。日本にも神社信

仰があるから、興味深いんじゃないかな。

だからお金出してくれませんか。最初の1本に2万ポンド、2本目に

2万ポンド。合計4万ポンドですね。作ってこちらの局で放映でき

るようにご協力いただけるとうれしいです。いかがでしょうか?

   

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映像?トマトがグループのツアーに参加してることの一番のいい点

は、ふたつのグループの境界線がぼやけること。

それに、振り向いて美しい映像が目にはいると、自分が観客のひと

りみたいな気がするんだ。起こっていることの真っただ中に自分が

いて、重要なのはミュージシャンだけじゃなく、ほかの大事な人達

全部 -- サウンドエンジニアや、照明係や映像をミックスしてる人

や...

自分はすごく小さな部分にすぎないんだ。大きなグループのね。

それって気持ちいいよ。

自分は特別大事じゃなくて、他のみんなとおんなじに大事なだけだ

って、気がつかせてくれるんだ。

彼等が作る映像を見るのはとても刺激になる。音楽を作りたくなる

よ。

僕はペンや鉛筆や写真やそういうものは使えないからね。僕は音楽

を作るだけさ。

構成は単純なんだ。でもだんだん複雑になっていった。とってもシ

ンプルに始まったんだけど、全体がどんどん複雑になったんだよ。

どんどん大きくなってね。

だけど肝心なのは大きくすることじゃなかった。むしろシンプルな

ままにしておこうとしてる。

彼等は次に何が起きるかにすごくオープンだね。トマトとの関係に

関して言えば、僕ら音楽をやるから君たち映像をやって、

お互いにリアクションして何が起きるかやってみよう、ってこと

さ。

グラハムが何年か前にビデオを作り始めて、今はライブをやってる

わけだけど、それで大切なのは僕たちみんなが一緒にジャムをして

るってことさ。

アンダーワールドは仕事じゃない。家賃を払わなきゃならないから

やってるんじゃなくて、やりたいからやってるんだ。商業的な成功

したのはアンダーワールドにとってラッキーだったね。

Richと僕はもう18年のつきあい。一緒に年をとって。ふたりにしか

わからない言葉とか暗号とかもある。アーチストとしてグループを

一緒にやってるって以上の関係なんだ。トマトとアンダーワールド

の共同作業は挑戦だけど、新鮮だし、すごく刺激的だし、魅力的

だ。

グループ間に線を引く必要はないと思う。僕たちはひとつの集団

で、ひとつの空間を出たり入ったりするだけなんだ

カールのデスク。今からっぽなの。

どうしてみんな僕達みたいなやり方をしないのかわからないな。こ

れが自然なやり方だと思うね。

階級制で、経営者が上にいて。そもそも実際に金をかせいでる人間

が従属的な位置で命令されたことをやらなきゃならないというのは

理解できない。

それはクリエイティブな人間の使い方じゃないよ。クリエイティブ

な人間には作りたいものをクリエイト(創造)させてやるべきなん

だ。

日本のトマトファンに何かメッセージを(大笑い)

思ってることを表現することだね。

声を出すことだ。それから何を言いたいか見つけるんだ。

一度に出来やしないよ、時間がかかる。アイデアは出たり出なかっ

たり、僕達だってうまくいかなくて、頭を抱えることもある。いつ

でも湯水のようにアイデアが浮かぶわけじゃないさ。苦しい作業だ

よ。

大切なのは始めることさ。始めない言い訳はいくらでもできるから

ね。

見ろよ。友達がいいこと言ったんだ。

「俺はただのスケコマシ。時々はシアワセ。コンビニでもヤッタし

 トイレでもヤッタ。"ボーン・スリッピー" はトイレにぴったり」

アーメン、その通りだと思うね。ボーンスリッピーをかけましょう

か?

ダメダメダメダメー