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■tomato.seminar (shibuya.april 1st.2000)

「Neither Here Nor There (ここでもなく、そこでもなく)」

僕はいままでトマトのデザインをそんなにすごいと思っていたわけではない。セミナー
を受けた後でも、個々のデザインがすごいと思ったというより、その背景にあるトマ
トのプロセスのすごさをわかるようになったということだ。デザインについてのセミ
ナーではない。

参加者にはブックレットがくばられ、要旨はそこにかいてある。CD-ROMもある。

●1. Michael Horsham(マイケル・ホーシャム):物語、風景、記憶について

道、伝統、表現主義という言葉について、ジャクソン・ポロック、ターナーの絵、
ハイデッガーの「存在」について。ビデオを見せながらとつとつと抽象的なことを語
り続ける。

僕は60年代のアシッドカルチャーなどの関係はどうなんだという質問をした。
関係ないことはないけど、別に伝統もあってもいいでしょ、という感じだった。

セミナーには僕の他にイメージソースのトム・ヴィンセントさん、ソニーのレトさん、
エドワードさんが参加していて、レクチャーの後の質問タイムはほとんどこの人達で
質問していたようなもんだった。

●2. Steve Baker(スティーブ・ベイカー):トマトの哲学とビジネスモデル

トマトのマネージング・ディレクター、トマト・リミテッドの会長。
スティーブ・ベイカー・マネージング事務所のディレクターでもある。
トマトの中で肩書があるのは私だけ。名刺を持ってるのも私だけ。

14才のときに自分のやりたいことがわかっていた。成功するバンドのマネージャーに
なりたかった。コリンのマネージャーになった。CDは200万枚売れた。
一緒に音楽をしていたジョン・ワーウィッカーと知り合い、トマトを初めた。

9年前にトマトを初めた。機材と三ヶ月分のお金しかなかった。自分のアパートでは
じめた。ロンドンのソーホー地区に場所をうつった。ビルをまるごと借りた。
トマト・フィルムスを18ヶ月前、一年前にトマト・インタラクティブ、今年
トマトN.Y.(制作会社)を作る。現在は連結決算で6億円くらい。今年は10億円くらい
にのびることが期待されている。

「Urban Action 都市活動」というブランド名でメンズウェアのラインを展開してい
る。サイモン・テイラー、マル・タカハシ。新しいプロジェクトにはまた、Barmato
と名付けた移動式のバー/イベント、トマト・ブランドの製品・家具の開発などがあ
る。Barmatoは渋谷からスタートし、メルボルンまで全て予定は決まっている。

10days workshopを終えた。学校を作る。アイデア・パークを作りたい。
教育は大きな影響を持つ。

1. クリエイティビティーはもっとも重要な資産
発明が人生を変えていく。

2. 成果を出す人が所有するべきだ。みんな株主。
プロジェクトから収益を上げなくても株主であることで収益があがる。
三人からはじめた。変化するスピードが力を与えている。

3. クリテイティブには環境が重要。
医者、弁護士、会計士になにをやれと言う人はいない。
クリエイティブな人になにをやれと言わないこと。

4. したくない仕事はうけない。トマトのメンバーはみんなフリーランスだ。
まずスケジュールを調整。それがあわなければ仕事はうけない。
2、3人にしぼられる。その間で仕事を共有する。必然的に決まる。

5. 可能な限り払うべし。アイデアはいくら?
クリエイティブに投資すべし。可能な限り管理費をおさえる。

十分に払うだけでなく、きちんと払うことが重要だ。
こんな当たり前のことを強調しなくてはいけないのは恥ずかしいことだが。
仕事は50%を前払いで受けとっている。トマトはいまだに前払いがなければなりたたない。
ロンドンにはクリエイティブな小さい会社がたくさんある。東京にはなぜ少ないんだ
ろうと言う。ロンドンには前払いする文化があったからだ。
14年間日本を知ってる。支払いがあるまで6ヶ月かかる。
クリエイティブな仕事が銀行からお金を借りるのが難しいのはみんな知ってるはずだ。

6. クリエイターは出口を要求する。作品がもっとも重要。外に出すべし。
会社の中で仕事していて、せっかく作ったのに公開されないことがある。
とにかく公開してしまえばいいのだ。自分のWebページで公開することもできるだろう。
おさないころからとりためた写真を本にした人がいる。本にしたことによって命をもっ
た芸術になった。

7. 著作権は慎重にとりあつかうべし。全て会社が所有する物ではない。
アイデアだけ売ることもある。アイデアではcopyrightがとれないのが問題だ。
Urban Actionの四年前のアイデアをある大手ブランドが使っている。対抗する方法は
ない。しかしUrban Actionの8年の軌跡を本にして出版することはできる。
トマトでは著作権はトマトが保有する。クライアントには広告化権を売る。

Q&A。

本部経費、時代によって変わるが30%とっている。20%におさえたい。ブランドネーム
を使うことによって最終的には0にしたい。外部制作会社を使っていたが、トマト
N.Y.の設立によってその分おさえられるはず。

トマトのメンバーは全て株主であり、株は均等に分配されている。
個々の仕事の報酬は30%を本部でとり、残りは仕事をしたメンバーが直接受けとる。

特許はとらない。コストはかかるし、期間もかかる。

copyrightはトマトが所有する。Nobody left tomato. いままでトマトを去ろうとし
た人がいないため、その点が問題になったことはない。しかし構造は三回変えた。

話は素晴しい。しかし今回の聴衆はみなデザイナーだ。こういう話はその管理者にこ
そするべきでないか。→今回が初めてのfullday seminarだ。これからも続けていくだろう。

エンジニア、ディストリビューションなどは。→外部に頼む。しかしこれからは変わ
らなくてはならないだろう。

トマトJapanは?→作らない。

antiromはまったく別の会社。たまたまビルが同じだけ。その中心人物三人をひきぬ
き、トマト・インタラクティブを設立した。Underworldもまったく別の会社。ビジネ
ス的関係はない。たまたま三人のメンバーのうち二人が、トマトのメンバーでもある
というだけ。

優秀なクリエイターに共通する性質は? →とにかく仕事がしづらい。
意欲がある。共有の価値観をもっている。

クライアントの仕事の場合、アーティスト的な面とおりあわないことがある。共通の
認識を持ってもらうのが重要。とにかくラディカルなものを作ってくれと言われて、
実際作ってみると、いやここまでラディカルなもんじゃなくて、とよく言われる。

クリエイターは賃貸料とか、現実は認識していなくてはいけない。
そういった問題に安心できるようにすることが必要。

私はクリエイターではないが、クリエイティブな要素は必要。

40〜45%がコマーシャルからの収入。前は70〜80%だった。

うれしかったこと。14才の目標を16年かけ達成した。コリンがtop of the pubで演奏
したとき。ワークショップの刺激をすばらしかった。

感想: この人こそがトマト・プロセスの核心だろう。

トムさん、久保さんと食事。

●3. Joel Baumann(ジョエル・バウマン)Tom Roope(トム・ループ):インタラクティビティについて
Tom:黄、白のシャツ  Joel:メガネをかけている

説明にでてくる作品は、Webサイトから見られるものもある。
http://www.tomato.co.uk/

映画的backgroundがある。時間、空間的に作る。
antiromをはじめた。

4〜5年前に作った、目的のない、インタラクティブなだけの作品。
http://hotwired.lycos.com/rgb/antirom/
http://www.hotwired.co.jp/rgb/antirom/

Levi'sのキオスク、Webサイト。三年前くらい。playful 遊び心を忘れない。

サイエンス・ミュージアム。セーターのできるまで。

9つに分割された画面。マルチユーザーを考えた。音楽を作る。

レストランのメニュー。タッチパネルをさわるまでは音に反応する仕組みになっている。
ジョン前田の作品に影響をうけた。

クラブの11m×6mの縦長スクリーン。Underworldの音楽。グネグネする画面、ダンス
をコミカルに表示、線画。

非西欧音楽を作るスコアシステムを作ったりもした。

エンジンのデモではない。音楽、画像も重要。

階層構造はやめようとした。それでスクロールによるナビゲーション。

vaionet100のインターフェイス。fake 3D。中心を5色の円が回っている。そのどれか
を選ぶとその回りに惑星のようにリングができる。

ネビゲーションはスケーラブルにする。最初からWebを考えていた。bandwidth,
flexible, object space。

インターネットにはモノがかけている。そこでCD-ROMを作った。四角いCD-ROM。

Q&A。

コードを共有している人達がいる。やりかたを交換している。
エンジンが完璧なので中身を工夫するとか、考え方からスタートするとか。

クライアントと紙の上で固定してしまうのでない。

コードをかくときはアイデアをスケッチする。

実際にゲームを作る? excitingではある。Toshio Iwaiはすごい。しかし僕らはプロ
セスが面白くてやってる。ゲームを作るのは長ーいプロセスになる。精神力を使う。
Directorはquick & dirtyだ。

基本的にDirectorで全部作っている。日本とオランダの作品が面白くてはじめた。
オランダのblindromというグループ。

表現のきっかけ。ハードをつかいこなすという方向、あらかじめ表現したいものがあ
るという方向。→両方の側面がある。コンピュータの外のものを中にもっていくとい
う方法。マイクからの入力がある、じゃあ使ってみよう、ということもある。
新しくヴァージョンアップしたら、一ヶ月くらいいろいろ使ってみたりしている。
しかし技術指向になりすぎてもいけない。

ネットワーク自身は面白くないか? →たしかにそうだが、インターフェイスの分野も
まだ革新的なフェーズにある。現在のブラウザも一つの比喩だ。5、6年後にはまた変
わっていくはずだ。

ディレクターの制約で作りたい物が作れなかったらどうする? →今日は来てないがも
う一人いる。その人はディレクターを本当によく知ってるし、Javaも知ってるしネッ
トワークもわかる。いまやろうとしてるプロジェクト、ディレクターでやるのはちょっ
と恐いかなと思ってる。Javaでやろうか。mixingしていく方向もある。

ゲームを作るとしたら、外部のプログラマーと作る。そういった場合でも、最後の
10%が一番難しい。お互いにちゃんとした理解が必要。

使っているものは? →Director, Photoshop, AfterEffects、数学の教科書。

レクチャー後、話しかけてみた。面白がってもらえた。

感想: ジョン前田、岩井俊雄に影響をうけてる。分野が近い。
作っているものはどれもすごくいい。遊び心の面白さ。

●4. John Warwicker(ジョン・ワーウィッカー):「Wordless Thing (言葉のない物)」
- クリエイティブ・プロセスに対する概念的アプローチ

トマトとは、会話、アイデアの交換である。8人からはじまった。二人来た、去った。
また来た。トマトは一つの会社でありコミュニティである。ビルの中にあと10人くらい。

基本に戻ることが重要。ワークショップは大変だった。

祖父は保険会社でリスクを計算する数学者だった。
クルト・ゲーデルの不確定性原理を教えてくれた。
北斎の浮世絵も教えてくれた。150年前の画家。すばらしかった。
Flowting Worldという概念が共通していた。

mmm... skyscraper, I love you.

sofaの写真のシリーズ。

麻布十番でとった写真。とりっきりコニカ(セピア)でとった。東急ハンズで買った安
いプリズムを前につけた。(すげーいい。)

若いころ、PhotoRealisticな絵を描いていた。回りの人はすごいと言っていたが、す
ごくないことをわかっていた。描こうと思えば描ききれてしまうからだ。しかし海だ
けは描こうと思っても描きれないことがわかり、それだけはいまだに描き続けている。

tomato「process」という本。一人、16〜20ページわりあてた。できてきたページを
壁にひろげ、並べ変えて本にした。15分。

スケジュールとお金が十分にあるとしたら何をする? スケジュールとお金をタイトに
するだろう。自分で制約を作る。

銀座アートスペース。LondonとTokyoをsex, money, foodなどで比較した。
Tokyo、マグロをきれいに並べている。ロンドン、サーカスでソーセージを焼いている。
32のスピーカーを配置、高いものもあり、安いものもある。
Webはどのくらい面白いものになれるのか?

Underworld live。18年前このバンドにいた。VJをやっていた。
リックとカール。

あるとき大学で講演した。その後グラハム・ウッドが来た。あなたの話は面白かった
が、あなたの作ってるものはクソだ、と言われた。面白いことを言うやつだなと思い、
対話がはじまった。それがトマト開始のきっかけだった。

アイデア 252号、アイデア 275号の表紙。

tomato gallery。トマトのビルの中にギャラリーを持っている。
Kelly、ノーベルト・シャーナー、ニック・パリッシュ。椅子を作った。(話をするんじゃなく、作れ!)

Federetion Square Site。オーストラリア、メルボルン。メディア・アーキテクトと
してかかわる。マイケルとピーターにひきこまれた。ラット・アーキテクチャ・スタ
ジオがやってる。

ヴァーチャルな環境とリアルなスペースを接続するデザイン。チャレンジングだと思った。

スペクトラムの壁面。NASAが開発したダイコリック・グラスを使う。
基本的には透明だがスペクトラムを反射する。このスペクトラムをロゴにする。
(50cm×50cmくらいで3000ドルする。ディスカウントしてもらったけど。)

atrium wall。工事現場の壁のデザイン。185m×3m。

4d necker cubes。前か後からわからない立体。6mのサイン。上が大きなスクリーン
になっていて、LEDメッセージが表示され、ちかよっていくと時計やパネルが見えて
くる。携帯でキーインする。

チャンネル4のロゴデザイン。丸が四つ並んでいる。
(後でこれについてSteveから面白い話を聞く。)

ストックホルムの近代美術館のロゴデザイン。

新宿にある「だいだいや」のデザイン。ロゴをデザインするという話だった。しかし
日本にきて内装全部だということがわかった。グラハム・ウッドはパニクった。一日
で全部やった。

感想: トマトのデザイン理論的な支柱である人物だ。個々のデザインのすごさには圧
倒された。シンプルな近代美術館のロゴ。かっこいい。

●5. トークセッション、いままでのメンバー+
Graham Wood(グラハム・ウッド)Simon Taylor(サイモン・テイラー)Jason Kedgley(ジェイソン・ケッジリー)

日本にきて面白いものは?
・トム: 最近ではないが、ジョン前田の作品。
・グラハム・ウッド: 日本の映画。二階から一階へカメラが動く。雪がはいってくる。「冷たい女」?
・ジョエル: 日本は街中で音を出せる。
・ワーウィック: 北斎。
・サイモン・テイラー?: いくつかbad filmを見せられたが…。
・ジェイソン・ケッジリー: ワークショップ。たくさん人と話した。
・マイケル・ホーシャム: ワークショップ。ロバート・グレイブス「ホワイトゴッデス」という本を読んでる。
・スティーブ・ベイカー: ワークショップ。

終了後、ベイカーにワークショップについて聞く。5月以降にもあるのか?
→いや今年はもう終り。来年やるかもしれないが。
つまりワークショップにすぐ参加したかったら、この4月しかないということか…。

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