alt.web展 concept paper

Living Web Browser

Living Web Browserは、Web上にある情報を抽象的な形態や動きによって表現するWebブラウザである。World Wide Webは約12年前、TimBerners-Leeによって、科学者の間の情報共有システムとして開発された。そこで共有 されるべき情報とは、端的には論文のことだった。このことはWebページを記述するための言語HTMLに大きな影 響を及ぼした。論文は明示的な参照によって過去の成果へとリンクされるためWebが論文の共有システムとして 始まったのは自然なことだった。しかしWebが一般の人へと拡大していくにつれ、Webページの持つ役割は変わっ ていった。そこで必要とされる情報は、常に論文のような論理的な構造を持っているとは限らず、むしろ視覚的・ 直感的に意味を伝えることもある。私はここで、ありえたかもしれないもう一つのWorld Wide Webについて想像 してみた。そこで考えだされたWebページは、論文ではなくマラルメの詩やカンディンスキーによる絵画を表象 するために作られた。もしこのような世界が存在していたら、Webはいったいどのような発展を遂げていただろ うか。

江渡浩一郎 [えとこういちろう]

1971年生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。在学中よりインターネットを用いた作 品制作を行う。IC'95 on the Webにて「RealPanopticon」(1995)を発表。sensorium プロジェクトにて 「WebHopper」(1996)を制作。sensoriumは1997年ArsElectronica .net部門Golden Nica賞を受賞し た。岩井俊雄×坂本龍一のコンサートMPIXIPMにて「RemotePiano」(1996)を発表。Canon ARTLABとの共 同制作「SoundCreatures」(1998)を発表。「SoundCreatures」は1999年ArsElectronica Honorary Mentionを受賞。同Festivalにて再展示を行う。日本科学未来館「インターネット物理モデル」(2001) の制作に参加。現在、国際メディア研究財団研究員。

技術説明

Living Web Browserは、プログラム全てがオブジェクト指向スクリプト言語Rubyによって書かれてい る。拡張ライブラリとしてOpenGL、DirectSound、FreeTypeを使用している。計算能力が必要な物理シ ミュレーション部分は拡張ライブラリとして実装している。Ruby の持つ高い記述力と、システムを動 的に変更できる柔軟性がこの作品を可能とした。

東京ローカルWeb景: The Air Side of Web Site

東京の町の風景にうめこまれたWebページを見渡すブラウザ。天井から吊された液晶ディスプレイを回転させる ことにより、東京のある地点から見た360度の風景を見渡すことができる。その風景には、実際にサーバが存在 するであろう場所に浮かんだ、Webページが映しだされる。そこには、これまでのWebブラウザを通して想像する ネットワークの風景とは異なった風景が広がる。町や都市の風景の中に立ちならぶ建物が、そこに何らかの人間 の営みがあることを表現しているように、Webページもまたそこに確かな人の営みがあることを表現する。Webペ ージは、人間が生み出したものとしてそこに確かに存在すると同時に、例えば町中の建物から吹き出しが現れて その内部を語り出すように、そこに生きる人々の活動を伝え始める。また、日常的に歩いている町の風景を通し て見るWebは、人間の身体にくらべて遥かに巨大なネットワークのスケールを、ほんの一端ながらも、見渡せる 範囲で直感的に感じとることができる。

杉原聡 [すぎはらさとる]

1977年生まれ。東京工業大学情報理工学研究科修士課程修了。人工知能の研究を行う。日本科学未来 館「インターネット物理モデル」(2001)では、プロトタイプ制作、シミュレーション制作など、制作全 般に関わる。ICC 信用ゲーム展にて、東泉一郎「仕事スケール#GTV/M1」(2001)のプログラミング・デ ィレクションを担当する。現在、国際メディア研究財団研究アシスタント及び東京芸術大学美術学部 先端芸術表現科非常勤講師。

技術説明

今回Webページの存在するであろう場所を推定するには、Whoisデータベースを利用した。これは、ド メイン名の登録者の情報(住所や電話番号を含む)を保持するデータベースであり、基本的にそれらの 情報は公開されている。しかし近年、その情報のプライバシー性や、情報を悪用する人の出現のため に、徐々に公開されなくなってきている。今回用いたデータは、Web上でデータが取得できていたころ のものである。また、住所から緯度と経度を特定するには、Web上で公開されている地図情報サービス を利用した。

展示協力: 細谷多聞 武藤努

主催:国際メディア研究財団 Tel:03-5411-9191 URL:http://alt.web.imrf.jp/ e-mail:alt.web at imrf.jp 会期:2002 3/21〜3/23 会場:EX'REALM B1Fイベントスペース

back